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【シゴトを知ろう】文楽の技芸員(太夫・三味線・人形遣い) 編

  • マイナビ進学編集部
  • 2017.02.17
【シゴトを知ろう】文楽の技芸員(太夫・三味線・人形遣い) 編

みなさんは文楽(ぶんらく)を観たことはありますか? 文楽は人の心の機微が描かれたストーリーを、時に人間以上にリアルな表情を見せる人形で演じ、観る人を深く感情移入させる芸能です。その人形劇において“声優兼ストーリーテラー”として物語をリードする役割を果たすのが太夫(たゆう)さんです。若手の太夫として注目を集める豊竹咲寿太夫(とよたけさきじゅだゆう)さんに太夫のお仕事についてお話を伺いました。

全ての登場人物の声優+ナレーションを担うのが太夫

撮影:渡邉肇
撮影:渡邉肇

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えて下さい

文楽とは人形浄瑠璃のことです。江戸時代に大阪で生まれた人形芝居で、代表的な一座であった文楽座の名前をとって「文楽」と呼ばれるようになりました。文楽の技芸員は「太夫」「三味線」「人形遣い」に分かれ、僕は太夫をしています。太夫は物語を語る人です。最近の仕事で言えば“声優さん”のような役目ですが、声優さんと違って基本的に全ての登場人物のセリフを1人で語り分け、さらにナレーションも担当しないといけません。それを関西弁のイントネーションをもとにした義太夫節(ぎだゆうぶし)を用いて語ります。マイクはなく肉声です。なかなか難しい仕事です(笑)。

公演は1年中行っています。1月・4月・6月・7〜8月・11月は大阪の国立文楽劇場で、2月・5月・9月・12月は東京の国立劇場でそれぞれ2〜3週間ほど上演し、3月と10月は地方公演で全国を回っています。公演のない日は稽古や師匠の手伝いをしたり、中学校・高校・大学で文楽を解説する講演や講義を行うこともあります。

<一日のタイムスケジュール(平成28年12月『仮名手本忠臣蔵』公演中)>
9:00 楽屋入り、師匠の楽屋準備
10:30 開演、初幕の“大序”に出演
11:00 楽屋準備の続き
12:00 師匠の出迎え・着替えの手伝い
13:00 師匠の出演・白湯くみ(舞台で師匠の側に座りサポートを行う)
14:00 師匠の着替えの手伝い
14:30 楽屋食堂で昼食、師匠の雑用
15:30 “七段目”の準備
16:30 “七段目”に師匠とともに出演
17:30 出番終了、師匠の着替えの手伝い・見送り
18:00 “八段目”の準備
18:30 “八段目”に出演
19:30 出番終了、先輩からの指導、師匠の着物の洗濯など
21:30 終演


Q2. どんなときに仕事の楽しさ・やりがいを感じますか?

やはり舞台に出ているときが一番楽しくて、その瞬間にこそやりがいを感じます。もちろん同時に緊張感もあります。高校生で本格的な初舞台を踏んでから10年ほど経ちますが、いまだに舞台は緊張します。特に今回の『仮名手本忠臣蔵』(平成28年12月公演)では師匠の隣で重要な役を演じるためかなり緊張していて、舞台稽古でセリフを間違えて怒られてしまいました(笑)。


Q3. 仕事の大変さを感じるのはどんなところですか?

全てですね(笑)。文楽の芸ってすごく難しいんですよ。60歳になっても一人前とは言われない世界です。僕はまだ基礎を学んでいる段階ですが、習得しても習得しても終わりがなく、常に壁が出てくることに難しさを感じます。逆に言えばどんどん上を見続けられる楽しさがあります。自分が満足してしまうとそこで成長が止まってしまいますからね。

物語を支配できる太夫に憧れた

Q4. どのようなきっかけでこのお仕事に就きましたか?

僕は文楽発祥の地である大阪に生まれ、家のすぐ側に文楽劇場があるという環境で育ちました。文楽を初めて見たのは幼稚園のときでした。夏休みに親子向けに上演されていた『西遊記』で、孫悟空が雲に乗って去っていくシーンが印象に残っています。当時の絵日記にも「人形の目がギョロッと動いてかわいかった」と書いてあります(笑)。

その後僕の通っていた小学校の旧校舎跡に劇場が建っている縁で、小学6年生のときに技芸員の方に1年がかりで文楽の演目を実技で教えていただくという授業を受けました。「太夫」「三味線」「人形遣い」のパートに分かれるのですが、僕は最初から「太夫」と決めていました。小さな頃から物語が好きで、物語を支配できる太夫がかっこいいなと思ったんです。そして1年間の授業の締めくくりとして生徒だけで文楽の演目を演じる発表会を行ったのですが、そこで初めて舞台に立つことの魅力に目覚めました。

そのとき教えていただいた今の兄弟子の豊竹咲甫太夫(とよたけさきほだゆう)さんに文楽の世界に誘われたとき、小学生ながらに「このタイミングを逃すと次はない」と思ったことを覚えています。当時、咲甫兄さんは20代で、弟子を取れる年齢ではありませんでした。咲甫兄さんの師匠を紹介していただき入門して今に至ります。


Q5. このお仕事に就いてからどんなことを学ばれましたか?

よく「どんなお稽古をしてきたのですか?」と聞かれるのですが、お稽古は芸人の修行生活においてほんの一部でしかなく、ほとんどは師匠の身の回りのお世話をすることです。それがすごく大事なことで、師匠や兄弟子、他の師匠たちと楽屋生活をともにするうちに、みなさんが普段どんなことを考えていて、どんな性格で、どんな生き方をしていて、どういうアプローチで芸に取り組んでいるのかがだんだん見えてきます。それがわかって初めて自分がどういう芸をしたいか考えることができるんです。その感覚を養うことが大事なのだと入門当初に言われました。

一つひとつの演目をお稽古で学ぶことがもちろん一番ですが、「芸を盗む」ということは芸を見るだけではなく、その人の全てを見ることなんです。師匠は学校の先生とは違うので手取り足取りは教えてくれません。月謝を払っているわけでもありませんから。学びたいことがあれば自分から食らいついていかないといけない世界です。ですので、常に視野を広く持って細かいところまで気をつけて見るように意識しています。

イラストも得意な咲寿さん。こちらは『this is 太夫。』
イラストも得意な咲寿さん。こちらは『this is 太夫。』

Q6. 高校生のときの経験が現在のお仕事につながっていると思うことはありますか?

やはり文楽は固いと思われるところもあって、高校生の頃から「こんな風にしたらもっとみんなにわかりやすく伝わるのにな」ということを考えていました。それを今、自分のSNSで実践しています。自分が高校生の頃に読みたかった文楽の解説を、当時の感覚のままテキストや絵などで表現して発信しています。

高校生の頃は僕が文楽をやっていることを周りも知ってはいたのですが、理解してもらえないのではないだろうかという勝手な思いもあって自分から話すことはありませんでした。でも一度だけ音楽の先生から30分間、太夫についての授業をしないかと言ってもらえたことがあり、そのときに初めて人に文楽を教える体験をしました。そしたら意外と同級生たちから「分かりやすい」「もっと小難しいものだと思っていた」という反応が返ってきたんです。分かってもらえるんだ!とすごく感動した出来事でした。

何となく進学するのはもったいない

Q7. どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?

この道を目指すきっかけは人それぞれにあると思いますが、みんな文楽が好きでやっていることには間違いありません。文楽を好きな人であれば誰にでも向いているのではないでしょうか。好きなことをやることが何より大事だと思います。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします

みなさんの中には進学のために勉強をしている人もいると思いますが、受験勉強が全てではないと思います。僕は文楽の道を目指したので、時間を有効に使うために大学には進学しませんでした。進学は自分のやりたいことのためならとても有意義なことだと思いますが、それもなく偏差値だけで学校を決めたりするのはもったいないことです。まずは自分のやりたいことや好きなことを見出すことから始めるとよいのではないでしょうか。



全員で80名程度という文楽の技芸員の皆さんは一生をともにする家族のような存在だそうで、取材現場の楽屋でも関西弁の冗談が飛び交う楽しい雰囲気が感じられました。文楽の世界に興味を惹かれた方は、まずは咲寿さんのSNSで情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。


【profile】豊竹咲寿太夫
Blog:http://ameblo.jp/sakiju/
Twitter:https://twitter.com/sakiju
日本芸術文化振興会:http://www.ntj.jac.go.jp
文楽協会:http://www.bunraku.or.jp

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